長屋の不思議
長屋のあった土地は、不思議な方向を向いています。
南に向いた間口の方向から、午前中は光がいっぱい入ってきます。その光が途切れると、こんどは北の方向から日差しが入ってきます。つまり、日差しが途切れることなく1日じゅう家に入るのです。普通、細長い家はあまり日差しが入らずに暗くなってしまうと言われています。ましてや3方を他の家に囲まれた立地、普通は1日のうちの2~3時間日が入ればいいような条件の悪い立地と思われています。ところが、この長屋のあった細長い土地の家には、1日じゅう日の光が家に入るのです。
どうして、北側から、こんなに日が入るんだろう…。
それは、ここに古い家が建っていた時から不思議に思っていました。
きっと、太陽の角度や高さを、昔ここに長屋を作った人々はよく知っていて、1日じゅう日差しの入る向きに長屋を建てたのです。いえ、ここは遺跡が眠る土地。長屋が建ったよりもずっとずっと大昔の頃から、それを知って、人々はここに家を建てていたのではないでしょうか。
きっと、冬には暖かく、夏には涼しく日が差す角度を、大昔の人々は、よく知っていたのです。
最初に水が湧く場があり、その周りに人が住まうようになり、そこに家を建て、それから道を作った。道は、風の通り道。そうしてできあがった町だったのでしょう。お役所だの先生方だのが机上で考える都市計画なんて、鼻で笑っちゃうような。
長屋というと世の中には馬鹿にして見る人もいるのでしょうが、これほど知恵が形になった日本の文化があるでしょうか。長屋を建てたわけではありませんが、かつて長屋のあった場所だというだけでも、宝のように思います。何千年も積み重ねられてきた知恵。
この窓は西側を向いている窓です。午後になると、この窓からも日差しが入ります。隣の家の屋根を追い越した場所にあるので、明るい光が入ります。その光はキッチンに落ちてきます。設計図面の段階では、この位置の窓ではなかったのですが、建てている途中でこの位置に変更してもらいました。キッチンに日が直接当たるというのは気持ちのよいものです。丁度、午後のお茶の時間に日が入ります。
少し遅い夕食を取っているとき、ふと見上げると、この窓に月が。子どもたちと一緒のあわただしい食卓、何かをゆったりと眺める間などありません。でも、席に座った位置から見ると、ちょうどそこに絵でも飾ってあるかのように月が光っています。えっ。月って…この時間にこんな位置に見えるものだったんだなぁ…ビックリ。それしてもぴったりに窓の位置…。
あぁ、子どもたちとのバタバタした食卓でなければ、月を眺めながら日本酒でも、ゆっくりちびちびとしたいものだけどなぁ…。
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コメント[2]
長屋なつかしいですね。
私も見習いの頃は長屋の改修に良く行きました。
もっとも見習いでしたから大工仕事はさせてもらえません。
たいていゴミ片付けとか。。。
懐かしのあの『かわや』(お手洗いともいいますね)を潰すときとか。。。防空壕のようなあの中に良く入らされて掃除したのを良く覚えています。
*****
先代の方達の知恵や工夫というのはすばらしいモノがあると思いますよ。長屋に限らず、昔の建物は『へぇ〜』とか『ほぉ〜』とか唸らすなにかがありますよね!
家というのは家族の象徴だったり、帰る場所だったりするところだと思うんです。
暖かい家、明るい家、楽しい家。
建築中に変更させてくれたのは、きっと神様のからの贈り物だったりして。。。
『窓はこっちだ〜!』なんて(笑)
僕らも景色を重視する時には図面を引く前にクレーン車で2〜3Fの高さまで確認する事があります。
そうすると、ここがリビングであそこは眺めの良いお風呂にしてとか。。。
幸せな家族が暮らす家を『けんちく』させてもらえるのは本当にうれしいし、私達も幸せな気分になれますよ。
Posted by 工房 at 2006年4月 8日 00:54 | 返信
工房さん、コメントをありがとうございます。
素晴らしいですね、幸せな家族が暮らす家をつくって幸せな気分になる…。そんな意識を持って家をつくってくださる工房さんに建てていただいた方々は、本当にお幸せですね。
よくぞこんな所に窓を! と思うお宅ってありますよね。あれはどうやって窓の位置を決めているのかと常々思っていたのですが、クレーン車を使ったりするのですね。なるほど…。東京では借景とか言っても、どっちみち家、家、家ばかりなので、なかなか窓から見える景色まで考えて作れませんね。マンションなら結構ありますけどね、東京タワーが見えるとかって。でも人工物は、ちょっと味気ないものもありますね。
日本古来の伝統的な建築が絶対いいと思っているわけでもないのですが、受け継がれてきた住まいの知恵には感心するものがありますよね。そんな知恵をもう少し現代の家に残せないものなのかなぁと思います。でも、なかなか難しいようですね。いろいろな法とか規制とかあったりとかもあるので…。環境も変わってきてますしね…。
地元の木が使いたかったのですが、「使いたいです」「はいどうぞ」という状況ではなかったりもして…。昔の長屋の形に家を作ろうとすると建築基準法的にアウトだったりもして…。
そうですよね、家ってやっぱり家族の象徴ですよね。でも、今よく建っている東京の家は、家族のための家じゃないんです。これは個人的な感覚なのですが、子どもがふたりになって「家族」になったなって気がするんです。子どもがひとりだと、夫婦に付属して子どもがひとりいるという感じ(あくまでも私の感覚ですよ)。「族」って言えるのは、4人以上なんじゃないかなって。東京でデザイナーズと言われる家は、夫婦ふたりとか独身とか、せいぜい子どもはひとりの家庭向けという感じがします。生活感がないんですよね。とは言っても、どちらかと言えばデザイナーズを選んでしまうのかなと思いますけれども、デザイナーズの家にはやっぱり違和感を持ってしまいます。伝統的な建築と、うまく融合できるといいのでしょうけれど…。
Posted by jun at 2006年4月 8日 21:41 | 返信
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