なんとなく設備
もしも飛行機の操縦席が8畳間ぐらいの大きさだったら、どうだろう? そんな操縦しずらい飛行機では、「グッドラック」ではなく「グッドバイ」だ。
建築設計事務所Sさんに打ち合わせに行った。でも打ち合わせと言うよりも「どうですか」みたいなかんじで、なんとなく家の図面の話に入る。
家の形や間取りのようなものは、だいたいこれでよいです。ということで、もうちょっと中身を具体的に考えていく。土間を何で作るかとか、床板に何を使うのかとか、キッチンに何を入れるのかとか。でも往々にしてかあちゃんは脱線する。冷蔵庫を置く位置などを考えてはああでもないこうでもない。
「キッチンは、座ったまんま、いろんなものに手が届くようにしたいんです」。と、かあちゃん。
大食らいのウランは小さなお茶碗に盛ったごはんを一瞬でペロリとたいらげ、「ぱくぱーく」とおかわりを要求、またペロッと食べて「ぱくぱーく」、そしてまたペロッと…。アトムはまだ冷蔵庫に手が届かないので「牛乳取ってー」「ケチャップ取ってー」「お茶ちょうだーい」。かあちゃんは炊飯器までご飯をつぎに行ったり、冷蔵庫を何度も開けたりで、ちっとも座って食べられない。座ったままぜんぶ手が届くといい。作るのも配膳するのも片付けるのも一箇所に立って素早くやりたい。飛行機の操縦席のように。
「スローフード」とか「粗食」とか、よく言うけれど、実際そういうことをしようとすると、テーブルの上やら横やらにいろんなものがずらりと並ぶ。ふりかけ・ゴマ・青海苔・味付け海苔・かつおぶし…。冷蔵庫からもたくさん出てくる。レモンやユズの果汁・しょうゆ・べにしょうが・七味唐辛子・酢・味噌…。いろんなものをかけたりまぜたりしながら食べたりして、テーブルの一角では、そのいろんなものが積まれて層になっていたりする。子どもたちが自分でやろうとするから、手の届く位置に置くとそうなる。この層なんとかならないか。
話が脱線しながらも、何を入れるか、なんとなくひと通り出てくる。「見積りとってみようかなぁ…」と、ひとりごとのように言う建築家のAさん。なんとなくそういうことになったよう。
4日ほどして、仕上げを書き入れた平面図と立面図と断面図と表がファクスで送られてくる。家庭用ファクスでは縮小されてしまって読みづらいだろうとPDFファイルでも送られてくる。
いままで、何社かに概算見積りを出してもらったことがあったので、仕上げ材とか設備とかは、なんとなくどんなものが並ぶのかはわかっていたような気になっていた。いわゆるローコスト住宅だと、どこの見積り書も似たようなのが並んでいたものだった。
ところが、なんだか、目新しい文字が並んでいる。
「丸太」「青竹」「真砂土」「青森ひば」「MDF」…。それに「エコキュート」…えっ? 予算内で??
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